中国武術の鍛錬法と鍼灸の技術

昨日は中国武術の某流派の門人から、その門派に伝わる基本的な鍛錬法を教えていただいた。それは套路がどうとかいう前に行うべき、基本的な身体の細かい使い方を身につけるための鍛錬法である。たとえば立ち方だとか丹田の作り方、胸郭の動かし方、拳の作り方、力の出し方、呼吸の仕方などなど。武術を本格的にやるのなら馬歩を毎日何時間とかさせられる。これはどんな分野でも同じで、ギターを本格的に習おうとすればひたすら音階練習・アルペジオ練習等々を繰り返す。宮大工なら毎日何時間もノミやカンナを研ぐ練習をさせられる。ギターの音階練習やアルペジオ練習なんて他の人が見ても全く面白くないだろう。でもそういう基礎を愚直に積み重ねると、曲を弾く練習だけしていた人とは1年2年と経てば大きな差が出てくる。

中国武術でもそうで、単発セミナーに参加したりビデオを見たりしても、まず分からない。正式にきちんと伝人の師匠について手取り足取り学び、毎日積み重ねないと身につかない身体操作法がある。

こういう中国の身体操作法の多くは気功法や内丹・中国医学の身体操作法と共通のものである。中国医学なら、たとえば鍼を刺すときの姿勢と力の出し方とか、整骨での関節の操作の仕方であるとか、推拿での点穴の仕方・指圧の仕方などと共通のものだ。私が師匠に治療を学ぶ際にもそういった身体操作の口訣をいろいろおそわった。中国武術の伝人のひとりでもあったので、そういうものがベースにあることは分かっていたけれども、その師匠から武術を学んだわけではなかったので、武術上の意味とかはよくわからなかった。昨日、正式伝承者の講義を受けながら、師匠からならった武術的裏付けはこういうことだったんだというのがよくわかった。最近は鍛錬してなかったのでこれを機に再開したいと思う。

鍼灸師やあんま指圧マッサージでも、こういうことを知らずにやっておられる方も多い。でもやれば治療効果や治療の切れ味に差が出てくるのを体感できるだろう。たまに「おっ」と思うような方もおられるのだが、聞くとたいていは「××拳やってます」という武術の心得がある方だ。若い鍼灸師・あんま指圧マッサージ師はぜひともこういう武術の身体操作を学んで欲しい。

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