患者さんが風邪のひきはじめで38度くらいの熱が出たときに、「インフルエンザや新型コロナではないという診断を病院でされた」ということなので解熱の治療をしました。その場で37度くらいまで下がったのですが、次の日にも37度前後くらいが続いていたので再度治療しました。

このような臨床例をSNSに書くと「風邪での発熱時に鍼灸って禁忌では」というコメントが鍼灸師から来た。「(ウソも)ここまできたか」みたいなシェアもされ、ちょっとがっかりしました。単純な風邪による発熱を解熱することは、本格的な鍼灸治療をやっている治療院だと日常茶飯事だと思うのですが、できない鍼灸師も多いということなのかもしれませんね。だとすると、鍼灸院を利用されている方でも鍼灸の可能性についてかなり狭くしか思っていないということなのでしょう。
鍼灸師養成学校の教科書における発熱治療の記述
2022年発行の教科書(『新版 東洋医学臨床論 (はりきゅう編)』)には発熱の鑑別と鍼灸による治療法が詳しく載っています。鍼灸学校の教員の友達に聞くと、「ものによっては要注意、鑑別が重要」くらいで教えてるらしい。そりゃそうだ。風邪での発熱は治療穴が鑑別ごとに書かれいる。ここに書かれてる程度の発熱治療ができないから禁忌なんてコメントしてきたのかもしれない。

教科書には注意を要する発熱として敗血症・化膿性疾患・重症肺炎・脳炎・腸炎・マラリア発作等々が載っています。鍼灸で治せはするが、これらは病院で治療を受けた方が確実かつ早く治ると思われます。西洋医学にもとづく病態把握としては「感冒(かぜ症候群)」として多めに説明しているから、教科書としてはこちらの鍼灸治療あたりにしておく方が無難と解釈しているのかもしれないですね。

教科書には「東洋医学に基づく病態把握」として東洋医学を
A)外感病による発熱
B)内傷病による発熱
に大分類しています。Bは西洋医学的に臓器の炎症系の病気で、感冒(かぜ)はAの「外感病による発熱」に含まれます。
「外感病による発熱」はさらに
1)風寒表証、風寒犯肺による発熱
2)風熱表証、風熱犯肺による発熱
3)暑湿による発熱
のみっつに分けて解説しています。感冒(かぜ症候群)の治療は1と2に該当します。

教科書から該当部分を引用してみます(図は引用者によるAI生成画像です)。
外感病による発熱
1)風寒表証、風寒犯師による発熱
飲食不過労、眠不足などによる正気の不足は衛気の衰退を招き、体表で風寒の邪との闘争により発熱し(風寒表証その後、ロ鼻や皮膚から体内に侵襲し肺の宣発・粛降機能が失調されると髄伴症状は強くなる(風寒犯師)。風寒表証では、軽い発熱、強い悪寒。脈浮か起こる。風寒の邪が肺に侵襲し宣発・粛降機能を妨げると、咳嗽、鼻閉・鼻汁、咽喉部の違和感などの症状が起こり、また、頭部に鬱滞すると頭痛が起こる。舌には特徴がない、脈は浮となる、風寒犯肺では、脈遅、脈緊となりやすい。
2)風熱表証、風熱犯肺による発熱
飲食不節、過労、睡眠不足などによる正気の不足は、衛気の衰退を招き、体表で風熱の
風熱の邪との闘争により発熱し(風熱表証)、その後、ロ鼻や皮膚から体内に侵襲し、肺の冝発・
粛降機能が失調されると随伴症状は強くなる (風熱犯肺)。風熱表証では、 強い発熱、 軽い悪寒 脈浮が起こる、 風熱の邪が肺に侵襲し、 宣発降機能を妨げると、咳、鼻閉・黄色い鼻汁、咽喉部の痛みや発赤などの症状が起こり、また頭部に鬱滞すると頭痛が起こる。 舌尖は紅、 舌苔は黄となる、 脈は浮となる。 風熱犯肺では、脈は数となりやすい。
※『新版 東洋医学臨床論 (はりきゅう編)』P365
治療法としては以下のように書いています。
B、東洋医学に基づく治療
(1)外感病による発熱
a)風寒表証、風寒犯飾による発熱
治法疏風寒、解表宣肺(粛肺)とする。風池、外関、大列欠に瀉法をし、
風池で疏風厳寒、解外関で解攴大椎で散寒、解表、列欠で解表、宣肺(粛怖)をはかる。風池は風証を治療することから命名され、風、散寒、解表に効果がある、外関は陽維脈の八脈交会穴で、陽維脈は一身の陽をつなぐ作用がり解表に効果がある。大椎は督脉と手足三陽経の交会穴であり、背上部にあるため陽に属し、上方や外方へと向かう性質があるため散寒、解表に効果がある。列欠は、手太陰経の絡穴であり、解表、宣肺(粛肺)に効果的である。
b)風熱表証、風熱犯師による発熱
治法は疏風・清熱・解表・宣肺(粛肺)とする。風池、大准・合谷・曲池・尺沢に瀉法し、風池で疏風・解表、大椎で清熱・解表、合谷・曲池で疏風・清熱・解表、尺沢で(宣肺)・清熱・解表をはかる。風池は、風証を治療し疏風、解表に効果がある。また、風池は『霊枢』熱病を出典とし、、熱病に用いられる経穴であり、陽維脈の交会穴でもあるため、清熱に効果がある、合谷と曲池は手陽明大腸経の経穴で、肺と表裏関係にあるため、疏風・清熱、解表・宣肺に効果がある、尺沢は、手太陽肺経(太陰肺経の間違い)の水穴であり、子穴もあるため、肺の熱証・実証に用いられ、清熱、解表、宣肺(粛肺)に効果がある。
※『新版 東洋医学臨床論 (はりきゅう編)』P368
実際問題としては、もっと細かい弁証と触診・刺法を行えば、こんなにたくさん経穴を使う必要はないです。うまくいけば1ヶ所2~3ヶ所くらいで解熱は可能だと思います。これ以上細かく記述するのであれば、鍼灸流派の党派性が強くなる可能性があるし、教科書のページ数も多くなるので、まあしかたないですね。





