広島大学の川村悠人先生の『ソシュールとインド: 構造主義の源流を求めて 』を読了。ひさぶりにわくわくしながら一気に読んだ名著である。
ソシュールの構造主義、構造主義的言語学の基本コンセプトがインドのサンスクリット文法学・言語学にあることのエッセンスを、原典と研究書を広く渉猟しわかりやすく再構築するという偉業を川村先生は成し遂げた。深い広い語学力、言語学的能力がないとこのような仕事はできない。川村先生と初めてお会いしたのは准教授になる前だったと思う。その言語的才能におどろいたとともに、著作を書かれるのを楽しみにしていた。
構造主義の入門書としてもおすすめできるが、1章・2章はサンスクリットやギリシャ語・ラテン語のような屈折語に触れたことのない人にはちょっとイメージが掴みにくいかもしれない。英語の屈折程度の知識だとちょっと苦しい。
言語を使って考えるとはどういうことか?ソシュール、構造主義の基本コンセプトは学問する人にとって避けて通れないと、丸山圭三郎先生の本を始めて読んだときに思った。とうぜん鍼灸師も必須の知識だと私は思っている。
大学でインド哲学を学んでいるときから構造主義の源流はインド?とずっと感じていた。ここ20年ほどの間に日本でもそういう論文が発表され出したのは知っていた。川村先生はそれらを踏まえて濃厚なこの入門書を執筆なさったということだ。



