陽気・陰気の粛降を捻転の補瀉で操作する方法

「左右の経穴を使い分けて陽気と陰気の昇降を行う話」という記事で陽気と陰気を昇降させることについて少し述べました。その順序にただ配穴するだけでもできるのですが、普通はいくつかの刺法と組み合わせて行います。

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気口九道を伝える古流派では経脈の疏通をベースに考えるので、疏滞を疎通することが基本になります。疏滞の原因と深さによって疎通する刺法を選択しますが、ここでは単純にするために捻転について述べます。

捻転の補瀉

捻転の補瀉について現代中医でも古典でも気を操作するのには正確でない記述が多いです。捻転の基本は、右回り(時計回り)にすると刺鍼している経穴がゆるんで経脈の気の流れを促進し、左回り(反時計回り)にすると気が集まってきて経穴が閉まります。虚している経穴であっても右回りに捻転すると気の流れを促進するので充実してきて平します。左回りにすると気が集まってきて充実してきますが、更に続けるとしだいに固くなってきます。前者を瀉法、後者を補法とも言えますが、あくまでも経穴に対してだけであって、後述するように経脈にとっての補瀉や全身の補瀉とは分けて考える必要があります。

ここでのポイントは深さと速度です。深さはなにを操作したいかによって変える理論があります。速度は気を同調させる口伝があります。

上記に書いた捻転の基本補瀉の口伝は私が受け継いだ流儀の分派でも共通なものです。現代中医の教科書で説明してある方法ではあまり気と同調させられないと思います。男と女で補瀉の方向が違うみたいな古典の記述もありますが、それは間違いです。

陽気と陰気の昇降配穴と捻転を組み合わせる

左右の経穴を使い分けて陽気と陰気の昇降を行う話」で書いたように、経気を昇降させるには手順があります。陽気を登らせるには右側の陽経を使いますが、複数の経穴を使う場合には下から配穴しています。ただ配穴するだけでも目的をある程度達成できますが、刺法を足すとしたいことをより早く促すことができます。

たとえば右の陽経に配穴するときに右回りの捻転を行うと、その場の気が拡散する方向に向かいますので陽気を昇らせることを促進します。反対に左回りに捻転しますと、気を集めるので陽気を登らせることを抑制します。前者は経穴に対して瀉で経脈に対して補、後者は経脈に対しては瀉で経穴に対して補ともよべますが、疎通させて平するのが目的なので、補瀉という概念に当てはめないほうがいいように思います。

だから気虚や陽虚で陽気を登らせたい場合は、右の陽経に配穴して左回りの捻転を行う、それに対して逆気した陽気をおろしたい場合は左に配穴をして左回りの捻転を行うという操作をおこなったりします。

以上は一穴配穴ですが、陽経どうし・陰経どうしで左右二穴に配穴するとどうなるのか、陽経と陰経を組み合わせる場合はどうするのかなどの問題が生じてきます。それには蔵府の気とリンクさせてどのように操作するのか等々、色々考える必要があります。どれだけたくさんの視点と組み合わせられるかによって下工〜上工の違いが出てくるわけです。

注意点としては、刺法を組み合わせると強力に反応しますので、誤治した場合は返し鍼が効かないことが多いです。

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