蔵の機能を蔵神と蔵精の視点で分けたとします。この場合の蔵精とは神気の中の精なのか、血脈営気精の精なのでしょうか。また違いはあるのでしょうか?
『霊枢』本神篇をもとに以下を考えてみたいと思います。
本神篇における精は2つの意味があると思いますます。
ひとつは人体の根源を考察する際、まず根源的なる神(神気)が存在し、そこから神(五神)と精へと分化するときの精です。これは精は肉体の根源的表現であり霊的存在、魄とほぼ同義と捉えられています。
もうひとつは本神篇における精≒魄の一つの分節化として「血脈営気精」の中で使われる精です。本神篇では「血脈営気精神」とあるので、この文脈における「精」は、精を「血脈営気精」として五分節化したときの精で、神の二分節化としての神(五神)と精としたときの精と「血脈営気精」の精はあきらかにカテゴリーが違います。両者の集合的関係は「精⊃血脈営気精」になるでしょう。
現代中医学的な発想で「蔵精」における「精」を考えると、これは「水穀の精微」、つまり栄養素をイメージしています。このあたりの用語の使い方が、理解を混乱させる要因になっていると思います。

魄が五神に属すると同時に、神の分化としての精≒魄、そしてその流れとしての血脈営気精を統括する用語としても用いられる点は、確かに議論の余地があり、誤解を生みやすいかもしれません。
ご提示の「神→精→血脈営気精」という分節化の他に、「神→血脈営気精」と捉え、血脈営気精を神気の直接的な分節化と考えることも可能ではあります。その場合、血脈営気精は血気・脈気・営気・気・精気に細分化され、それらを蔵する五臓の機能は蔵血・蔵脈・蔵営・蔵気・臓精と表現されることになります。これは、神気が肉体にあらわれる機能としての血脈営気精ということになりますね。
蔵神の治療では五行穴を使うということなのですか?
必ずしも五行穴に限定されるものではないと考えます。五行穴に特化した治療法を重んじる流派もあるのでしょうか。ちなみに、口伝の初歩では、外兪穴を用いて五神を調整する手法が存在します。
どこかの流儀に属しているわけではないので、神気を主眼において考えることが少なかったです。先生のおっしゃるのは口伝ということですので、詳細までは言えないと思いますが、蔵神の治療の概要を説明することはできますでしょうか?
蔵神の治療の概要についてですね。口伝の内容も含まれますので、詳細はお会いした際にお伝えできますが、基本的な流れとしては以下のようになります。
- まず、人迎気口診により内傷の有無を確認します。
- 次に、陽乗脉あるいは陰乗脉の診察を通じて、七情の変動を把握します。
- 七情の脈診により、五神のどの側面に変調が現れているかを特定します。
- 特定された五神の変調に対応する外兪穴を選択し、配穴を行います。
これはあくまで基礎段階の口伝の内容であり、秘伝というわけではありませんので、直接お会いする機会があれば、より詳しくお伝えすることができます。