気口九道脉診を使った症例~心窩(みぞおち)のつまり感

このサイトにおいては、一部の例外を除いて症例を掲載しないことにしています。以下の症例は『埋もれている脉診の技術 気口九道』の編集代表の平口先生から求められて、掲載前提で治療して書いたものです。

【患者】 32歳 男性 開業鍼灸師
【主訴】 心窩部のつまり感
【現病歴・既往歴・現症】

心窩付近に滞り感もたれ感・食欲不振があって、 それが1ヶ月近く取れない。 鼻尖から口の回りにかけて萎黄色・両頬がやや煤黒い。頬骨付近が縫色。 悪血がある毛穴がいくつもある。 足関節付近に原因不明の皮膚病。黒く肥厚し、カサカサしてひび割れている。 いくつもの病院で検査をしたが、原因不明。 全体の勝理は粗で毛穴が開いている。 肌肉は筋張って弾力性がない。 左三陰交に痰飲の硬結があり、そのまわりは空虚で触るだけで鋭い痛みあり。 右内関に圧痛。左公孫も肌肉が筋張り強い圧痛あり。

【脈診】気口九道脈診で右心包経と左脾経。やや濡脈ぎみの緩脈。
脈管回りにやや渋脈有。

【弁証】腎陰虚・血虚・湿邪困脾

【配穴】右内関・左公孫、左三陰交 章8

【治療効果と考察】
ベースに腎陰虚(虚熱無し)と血虚があり、 それに脾虚の運化失調による痰飲が加わったと判断した。 心窩の不快感は脾の運化失調によるものであろう。 右内関を遠位に向けて疏通、 左公孫は深めに補にて20分ほど置鍼したら萎黄色はほとんど消えた。 濡緩脈が締まり、渋脈が残ったので三陰交の硬結を疏通。 接触しただけで痛かったのが、押圧しても痛くなくなった。 その後に中位 (脾経の深さ)を迎随の随補。 心窩の不快感と、萎黄色はほとんどなくなる。 毛穴の瘀血色も退色するが、まだ残。血虚を根本的に治療するには時間がかかるだろうが、 一回の治療でかなり変化するので、治しやすいかもしれない。患者が鍼灸師なので、毎日左の三陰交と右の陰谷を補すように指導。

『埋もれている脉診の技術 気口九道』P195

この程度の治療であれば、他の流儀でも簡単に直せるレベルの症例であると思うが、気口九道脉診の治療法を知らないひとでもわかるようにとあえて簡単な症例にしてみました。

当院のような自費の鍼灸治療院にはこのような簡単な症例は少なく、もっと複雑なものが多いです。しかしそれを書くとなると、本の言及範囲から大きく逸脱するので、あえて簡単なものにしたということです。

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