先生のおっしゃる『素問』の六部定位脈診と『難経』の六部定位脈診はなにが違うのでしょうか?
私は脉診を重要視する経絡治療の流儀のトップクラスの先生の治療院で数年働いていたことがありましたが、実際に脉診にもとづいて証を立てて鍼をして、その通りに効いたことはほとんど見かけませんでした。ちゃんとした脉診を学びたいのですが、どこで教えていただけるのでしょうか?
こんにちは。みなさん脈診に興味があるのにうまくいかなくて悩んでおられてるようですね。脈診で重要なポイントはなんでしょうか?
『素問』の脉要精微論篇に出てくる六部定位脈診と『難経』の六部定位脈診は診ている対象も違いますし診方も配当も違います。中国の古典に記されている脉診を理解するには、どういう視点で体を診るように組み立てられた脉診なのか理解することです。それがはっきりすれば一本鍼を刺すごとに四診すれば変化がわかります。理論化された視点がない脉の解説があるとすると、それはちゃんと理解して書いていないものだとおもわれます。
おっしゃっている『素問』の六部定位診は解剖学的な臓腑の状態を診る脉診です。脈状と合わせて臓腑の栄養血管や機能血管の流れる具合はどうなっているのかとか、臓腑の寒熱はどうかとか診る脉診法です。気口九道は経絡経筋の疏通状態がどうなっているかを診ます。『難経』の脈診の説明はちょっと難しく、いくつかの視点を組み合わせて三部九候診のお手軽バージョンみたいな構造になっています。
脉診をもとに治療して効いているかどうかを知るには、まず脉診をしたときに「ここが問題かな?」と推察して四診を駆使して確認します。一本配穴・刺鍼してみて、部位を四診してそれがどう変化したのか確認したらいいのです。変化していなければ効いていないし、変化していれば患者さんに自覚症状がなくても変化しているんです(いい方向への変化か誤治の方向への変化かは別にして)。
「脉診のトップクラスの先生のところで働いた経験があるのに、実際に鍼が効いてるのをほとんど見たことがない」とのことですが、実際に変化がなかったのでしょうか?そのあたりのことは私にはわかりませんけれども、効かないのなら患者さん続かないんじゃないですかね?脉など診なくても適当に痛いところに配穴したり特効穴を適当に刺しただけでも症状改善することが多いんですけどね。それでも私が経絡治療流とは違う中華伝承医学風の脉診をしたら「ここがこう変わっている」と指摘できるかもしれません。
患者さんの主訴は変わってないのに「脉が良くなった、脈差が平したからいい状態になった!」なんてことで治療終える大先生の話はたまに聞きますけど、それで患者さんが続くとすればすごいことです。質問者さんの修行先の先生がどうだかわかりませんが。
当院ではプロや学生さん向けに解説付き治療メニューを作っています。一本打つ前に「脉のここと望診のここと触診のここはこういう状態を反映してるから、一本打って変えますね」、終わったら「こう変わってこうなったけどこれが残ってるので、ここに一本」みたいな感じで解説しながら治療するコースを作っています。漢方医や薬剤師・鍼灸師さんにけっこう楽しんでもらってます。養成学校の学生さんは通常コースのお値段でやってます。
本当は中華伝承医学会の講習会にお誘いしたいのですが、常連相手で難しいです。当院のお近くなら3人集めていただければ1からお教えしますよ♪他のグループのところは分かりません。
※いろんなところで質問・回答したことを適当にまとめて記事にしたものです。