「こんなこと、鍼灸学校で習いませんでした!」という理由

X(旧twitter)に書いたのを加筆してまとめたものです。だから元の文章よりかなり変わっています。

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学校で教えて欲しいんですが。。。

鍼灸学校で鍼を鍼管に片手で何度も入れなおす片手挿管を習います。江戸時代に考えだされた手技なわけですが、鍼の単回使用が推奨されているご時世にいまだになぜそんなのを重要視するのがよくわかりません。1分間に何回以上できないとダメなんて鍼灸師の必須技能とは思いません。お灸をすえる速さも同じです。鍼を打つ本数、お灸をすえる回数が少なければ速さなんてどうでもいいのです。特殊な手技として身につけたければどうぞというくらいでいいのではと思います(批判を浴びそうですが)。学校出てから30年たちまちたけれども片手挿管なんて一度も使ったことがないです。

片手挿管なんかより、学校の先生には切皮・刺入時の姿勢やコツを、鍼管を使わないやり方も含めて、きちんと教えて欲しい。学生や学校を出たての人に教える機会があるのですが、そういう基本的なことを習えてないことが多いと感じています。

数日前に某所で、卒業したての方数人と臨床歴40年以上の老練先生に会う機会がありました。鍼の刺入の話になったのですが、新米先生たちが切皮・刺入時の姿勢やコツを知らなかったので、老練先生が手取り足取り教えたら「学校で習ってない!」とみんな感動してました。

それと捻鍼よりもそのまま切皮痛を起こさないで刺入するコツを教えた方がいい。捻鍼の持ち方って軸がずれやすい(たわみやすい)ので鍼が長くなるほどコツがいります。そういうコツを知らないで2寸や3寸の鍼を捻鍼で入れるなんてかなり難しいのでは?

鍼管使うにしてもセッティングのコツがあって、ツボに1mmの誤差なしに刺せてる学生や新米さんは少ない。金属製にしろディスポのプラ製にしろ通常入手できる鍼管の内径は、鍼先に対してかなり大きいのがポイント。刺すべきポイントからズレやすい。昔、大浦慈観先生が復刻させた杉山流の鍼管を買ったが、内径がかなり小さかった。昔の人はよく考えて道具を使ってたのだろう。

私の師匠は八極拳の達人だったので、鍼を刺すのも、手技療法やるのも姿勢がかっこよかった。鍼を刺すにもきちんと馬歩ができるか?ということから教わった。

鍼の刺し方から離れるけど、こういう基本的なことができるのが重要で、「かしま式ナントカ治療を開発!」みたいな焼き直しの発明なんかに飛びついたらダメ。そのほとんどは過去に誰かがやってるのを言い換えるマーケティング戦略です。新米さんは飛びつきたくなるようですが。職人が熟練の技能者になれるかどうかは、基本的なことを何度も何度も繰り返して体に覚え込ませるのが重要というわけ。それが身についたら自然と自分流のができる。とにかく先人の真似をすることです。

学校で習ってない?いや、それは。。。

とまあ、こう書いたら学校で非常勤講師をやっている友人の先生から、「確かに教員の問題もあるんですが、学外の講習会で学んで「はじめて習った。学校で習話なかった!」ということのほとんどは、教えたけど出来ていなくて、教わったことを忘れているんです。。。」とのご意見をいただいた。このご意見をいただいて、なるほどと思ったんだな。この方は普段はご自身の治療院で臨床を積まれてて、非常勤で養成学校で教えておられる。

いくつかのパターンが考えられるけど、一番大きな理由は、学校ではじめて習った時は、まさしく初めてだったので理解できていなかった、でも時間が経って理解できる準備が整ったときに、学外で学校とは別の切り口で説明されたらすんなり体に入ってきたというあたりだろう。学校で習った当初は刺すのに必死で姿勢や手先のコツなどに注意がいかず、同級生に痛みを生じさせて焦って余計できない。なんてのは誰もが通る道です。

あと、鍼灸の専門学校は動機も学習能力も通常の学校より幅があるので、すべての学生に伝わるように教えるのは難しいということもある。高校や大学なら偏差値と志望コースで、学生の知的能力や学ぶ動機が絞られます。ところが鍼灸学校なんて、最高学府の院を卒業している人から中卒の人まで入ってきますし、中高年の方もいます。強い志を持った方から、なんとなく入ってきた人もいるわけです。鍼灸学校で教員をしている友達が何人かいるのですが、話を聞いていると、みなさん高校や大学で教えるのとは違う苦労があるようです。

鍼灸学校の外で、いろんな流派の勉強会だと受講者の質の幅はかなり狭まります。そういうところから流派の雰囲気というのが醸し出されます。それに合う人が講習会に参加するわけですから、教えられたことが腑に落ちて「学校で習わなかった!」「素晴らしい!」となりがちというオチな訳です。

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