中華伝承医学入門講座の講義ノートより
気一元論
上述したように、現象世界すべてが気によって生じるという考え方を気一元論とよびます。人間の体や意識・感情も気によって生じます。自然現象もすべて気によって生じます。形而下(物質世界)のみならず、形而上的なことも含めて、すべての現象世界が気によって生じるという考え方です。
形は気が凝縮するよって形作られます。これは「陽気が陰気に引き寄せられて凝縮して形になる」と表現できます。逆に陰気が陽気に引き寄せられてると形が崩壊(拡散)すると考えます。このふたつの考え方が陰陽論の原形(両儀)になります。
気のことを中国医学では形気と呼ぶことがあります。それを表現する外形内気という言葉があります。目に見えている(外)のは形でなんだけれども、目に見えない(内)けれども気の力が働いて、現象(=形)が存在していることを表す言葉です。
これを基本にして中国医学の人体観や診察法がでてきます。たとえば今回述べる人体三分節論の魂魄神、インドにおける地水火風空の五大説の中国医学版である腎(地)肝(水)脾火(火)肺(風)など。臓気・経気・宗気など、気を表す言葉が中国医学にはたくさんありますが、これは別々のものではなく、本来はひとつのものです。
ひとつの物の一部分を、臓気・経気・宗気等々と名付けただけです。現代中医学はこの気一元の観点を曖昧にしたまま、臓気・経気などと語りますが、これは混乱のもとです。注意が必要です。
現代中医学は気を「物質を構成する基本物質」などと表現したりしますが、これは中国共産党の基本思想であるマルクス主義的唯物論で解釈した定義で、間違いです。あくまでも、形而上的世界・形而下的世界を含めた現象世界の総体を、現象させる力・働きだとイメージしてください。
陰陽や五行は「元素」ではない。人間も器世間の中の存在なので、気を陰陽や五行の観点から分節化して考えていこうとしたのが古代中国医学である。陰陽や五行を「元素」として書いているのは間違い。