起立性調節障害(OD)の治療を病院で受けているんだけれども、服薬してもあまり良くならないということで鍼灸治療をご希望される方が増えてきました。
当院でも対応させていただいていますが、質的な栄養失調が原因であることが多いので、オーソモレキュラー(栄養療法)を標榜されている医療機関での検査とサプリメント療法を優先することをお勧めしています。
検査結果と今までの生活や症状をお聞きしていると、その方が病気に至ったストーリーが見えてきます(後述)。
鍼灸治療はオーソモレキュラーと併用を勧めさせていただいています。オーソモレキュラー療法との併用で、当院に来院される起立性障害の方の改善率はかなりあがりました。
起立性調節障害の考え方
起立性障害は小学生高学年から高校生にかけて、いわゆる「思春期」に多く見られる病気です。「体も心も大人へ向けて急成長して行く時期で、そのダイナミックな変化が自律神経にまで及ぶため、交感神経と副交感神経のバランスが崩れやすくなるからだ」といった説明が専門の医師からは言われていますが、甲状腺疾患などの基礎疾患由来のものでない限り(そういうのはあらかじめ除外診断されます。(後述))、原因はほとんどわかっていません。
薬物療法もありますが、あまり効果がないと感じられている方が多いです。発症して1年後には約半数が、2〜3年後には約8割が回復するといわれています。しかし大人になっても改善しない方もいます。それはなぜか?
当院の患者さんにオーソモレキュラー療法で即効性があった症例が多いことから、質的な栄養失調が主な原因なのではと推測しています。それを無視した治療をするから治らない症例があるのではと思うのです。
起立性障害の症状
寝つきが悪い
朝起きるのがつらい
強い倦怠感・疲労感がある
食欲が低下する
立っているとしんどい
立ちくらみをよく起こす
イライラしやすい
集中力が続かない
動悸や息切れがする
失神発作を起こす
風邪でないのに微熱が出る
顔色が優れない、青白い
ストレスを感じると気分が悪くなる
専門医による起立性調節性障害の診断とオーソモレキュラー療法的視点
診断に関しては、一般社団法人日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)のページには以下のように記されています。
1)立ちくらみ、失神、気分不良、朝起床困難、頭痛、腹痛、動悸、午前中に調子が悪く午後に回復する、食欲不振、車酔い、顔色が悪いなどのうち、3つ以上、あるいは2つ以上でも症状が強ければ起立性調節障害を疑います。
2)鉄欠乏性貧血、心疾患、てんかんなどの神経疾患、副腎、甲状腺など内分泌疾患など、基礎疾患を除外します。
3)新起立試験を実施し、以下のサブタイプを判定します。
(1)起立直後性低血圧(軽症型、重症型)
(2)体位性頻脈症候群
(3)血管迷走神経性失神
(4)遷延性起立性低血圧
(近年、脳血流低下型、高反応型など新しいサブタイプが報告されているが、診断のためには特殊な装置を必要とする。)4)検査結果と日常生活状況の両面から重症度を判定する(ガイドラインを参照)
5)「心身症としてのOD」チェックリスト(ガイドラインを参照)を行い、心理社会的関与を評価する。
一般社団法人日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD) 2023/10/16時点
https://www.jisinsin.jp/general/detail/detail_01/
1の「立ちくらみ、失神、気分不良、朝起床困難、頭痛、腹痛、動悸、午前中に調子が悪く午後に回復する、食欲不振、車酔い、顔色が悪い」という症状は、オーソモレキュラー療法の教科書的視点だと、ビタミンやミネラル類の欠乏から生じる症状でもある点に要注意です。
栄養素に関しては、2のところで鉄欠乏性貧血の除外診断をしているので、鉄はみていることになります。しかし鉄欠乏性貧血に関してもなぜ鉄が少ないかまで調べているドクターがどれほどいるか不明です。
鉄に関していうならば、そもそも鉄を含む食事を取れていていない・胃や腸に問題があって鉄の吸収がうまくいっていない・女性が生理で失われる鉄が多すぎる・激しいスポーツで鉄の消費が激しい(運動性溶血性貧血)等々、様々な原因があり、それに応じて対処法が違ってきます。
起立性調整障害を専門にあつかっている医療機関でも、どこまで正確に2の除外診断をしているか疑問に思う症例もあって、他の医療機関で調べてもらったら元の除外診断が間違っていたということもときどきあります。
あと、10代は成長期なのでそれに見合った栄養が必要なのですが、体の成長に栄養が追いついてないと思われる方も多いです。
起立性調整障害の薬とオーソモレキュラー療法
血圧が下がることを防ぐ、血圧を安定させる薬として、ミトドリン塩酸塩(メトリジン)・メチル硫酸アメジウム(リズミック)、脈を安定させる薬としてプロプラノロール塩酸塩(インデラル)・ビソプロロールフマル酸塩(メインテート)などの薬が使われルことが多いようです。ただし医師でも薬剤師でもない鍼灸師はそれらに対してアドバイスや処方できる国家資格も知識もありません(やれば医師法違反になります)。
ただし除外診断には質的な栄養失調も含めて、オーソモレキュラー的な影響状態を診る検査も加えた方がいいようには思っています。質的な栄養失調があるのに昇圧薬や脈を安定させる薬を飲むことは、薬でむりやり体に強いてることになるのではと思われます。そのために、当院ではオーソモレキュラー療法を取り入れている医療機関の受診をおすすめしているわけです。
起立性調整障害と鍼灸
上に挙げた起立性調節障害の症状や除外診断の病気への対処法も鍼灸にもありますが、やはり質的栄養失調があると、効果は一時的であることが多いです。
じゃあオーソモレキュラー療法を専門のクリニックでうけたらめざましく良くなるかというと、胃腸に問題があってサプリメントの吸収効率が悪くて反応が鈍いかたがおられます。このようなときに、鍼灸治療と併用すると相乗効果で成績があがります。
10代は成長期なのでサプリメント療法だけでも改善することが多いですが、20代になっても起立性調節障害が続いている場合は、積極的に鍼灸も併用してみてください。