文献学的センスの訓練

仏教サロン京都で主催している、東大助教の高橋健二先生の「サンスクリット・リハビリ講座」の二回目が終わる。

ヒトーパデーシャという説話集を文法的に詰めて読んでいく。基礎文法を終えた人相手の講義だから、かなり細かいところまで説明してくださる。たぶん旧帝大の学部ないし修士のゼミレベルのはず。他の受講者は頭のいい人ばかりなので、私の知的能力を何度も超えそうな話をされる。

本業に結びつかないことを趣味でやっているんだけど、こういう訓練を受けていると、勉強の仕方、文献学の仕方のセンスの訓練くらいにはなる。2時間弱で写真のノートくらいの長さなんだけど、専門家から本格的な訓練を受けているのといないのでは、文献、古典を読みかたが全く違ってくる。

例えばある単語を調べる場合、辞書を調べたり、古典のデータベースで単語の用例を調べたりして字面を追って調べたらつもりになって、あれこれマウントかけてくる人が鍼灸で業界では実に多い。中にはそれで本を出している人たちもいる。大学にでも行って訓練を受けたらそれなりの読み込み方ができる知的能力があるのに、そういう作業にコンプレックスがあるのか、指摘されるとあれこれ屁理屈並べて避けちゃうんだよね。もったいない話だ。

まあそれはともかく、サンスクリットの単語って日本人には想像できないような複雑な変化がなされる。たとえば一つの動詞が性数態や名詞化に応じて細やかな文法規則がある。100種類くらいには変化する。さらに名詞化されてやはり複雑な変化をする。それをいちいち説明しようとすると、高橋先生レベルだと一つの動詞だけで1時間は十分かかる説明をなさるわけだ。

世界的に通用する論文を書ける学者ならそれは普通の世界。字面だけ追って読もうとする人たちとは世界が違う。こういう勉強会に参加すると、そういう違いがわかるだけでも参加の甲斐があるというものだ。

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