起立性調節障害はなぜ小学校高学年から中学生に多発するのか?

起立性調節障害の発症年齢ですが、だいたい学童期(6~12歳)の後半に相当する小学校の高学年くらいから出始めて、中学から高校1から2年にかけて多発し、その後は減っていくというのが、当院に来られる方にもとづく臨床的な感覚です。

起立性調節障害の原因は医学的にはよく分かっていないとされていますが、「起立性調節障害と鍼灸」の記事でも少し触れたように、成長と栄養に関係してくる症例が過半数なのではないでしょうか?

医学的に確立されたエビデンスはまだないですが、臨床経験にもとづく考えと対処を以下に述べてみたいと思います。

成長期(思春期)に質的栄養失調になりやすい理由

正常な子供の第二次性徴は、男子では10歳から13歳、女子では8歳から12歳あたりから始まります。女児の方が少し早いです。心身ともに小児から成人へ成長する時期です。とくに体はこの時期に性ホルモンと成長ホルモンの作用で骨がいちじるしく成長して身長が高くなり、生殖器官も発達します。このときに大量の栄養素が必要となってきます。成長につれてたくさん食べられるようになってきますが、問題はその食事の内容です。

冷凍食品や加工食品に炭水化物や蛋白質・脂質がそれなりに含まれていても他のビタミンやミネラル類は加工段階でかなり失われます。炭水化物や蛋白質・脂質を消化吸収し代謝して良好な状態で身につけるには大量のビタミンやミネラル類が必要です。こういった食材を使って親が愛情を注いで手料理をしても、残念ながら必要量の栄養素を摂取できるかははなはだ疑問です。

また、思春期は交際範囲がひろがるので、友だちとファストフード店やファミリーレストランなんかに行って食事をする機会も増えるでしょう。そういうところの食事は冷凍食品や加工食品を調理して出しています。思春期に友達同士で、高級料理店に行く人たちはごくごくまれでしょう。

また安価なおやつの類いも自分で買ってたべるようになります。

和食を手作りしていますという親御さんはたくさんいらっしゃると思いますが、基本的に和食は糖質と塩分過多になります。健康を意識してマクロビオティックやビーガンの料理をしていますという親御さんもいらっしゃるのですが、菜食主義は栄養失調になり病院に運ばれてくることも多いと栄養学や生化学の専門書にもよく書かれています。菜食主義で健康でいられるには腸内細菌が大きく関わっていると最近は言われ始めています(これに関しては別に記事を書きます)。

子供はもとより親に栄養の知識がないと、愛情を込めた質的栄養失調になることが多いのです。その結果、第二次性徴期・思春期の体の成長に栄養素が追いついていけず、何割かの子供は起立性調節障害になると思われます。たとえ起立性調節障害と診断されてなくても、この時期のうつ病や月経前症候群や朝起きられない・パニック障害等々として病院に通院するようになったりするわけです。それらの病気の中には質的栄養失調由来のものがかなりあるはずです。

起立性調節障害の対処法

まず立ちくらみ・失神・気分不良・朝起床困難・頭痛・腹痛・動悸・午前中に調子が悪く午後に回復する・食欲不振・車酔い・顔色が悪いなどの症状があれば、オーソモレキュラー療法を取り入れているクリニックで、専門的な検査をしてみてください。多くの場合は自費でそれなりに費用はかかりますが、子供の健康には変えられません。そして親もサプリメント療法や料理の勉強をすることが重要です。このような努力なしに鍼灸治療・整体治療等々やってもその場しのぎです。

起立性調節障害の鍼灸治療の重要点は食事やサプリメントが効率的に消化・吸収・代謝できるように体を整えてやることです。症状に注目するだけでは改善は難しいです。

思春期の栄養失調は一生尾を引く

思春期というか生まれて成長が終わる二十歳くらいまでに重要なことは、健康な体を作ることです。いくら勉強ができて優秀な人材になっても健康でなければ十分に才能が発揮できません。健康な体の基礎を作るのは成長期にしかできません。だからこの時期に長期にわたって病気がちになると一生引きずる可能性が高くなるわけです。

私は治療家になって30年ほどになりますが、とても優秀なのに病気でエリート街道から脱落した人たちをたくさん診てきました。たとえ脱落しても病気を治して別の道で活躍できればいいのですが、一生病気を引きずるまでしか回復できない方々もたくさんいました。この私もそういう人間のひとりです(プロフィールに少し書きました。エリート街道とは全く無縁でしたが。)。子供のそのようなリスクを減らすことができるのは親しかいないのです。

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