先だって、「帯状疱疹後の後遺症 関節機能異常を改善したら症状が軽減する例」という記事を書きました。
同じような例ですが、ちょっと違ったパターンを今回書いてみたいと思います。
前回、冒頭に以下のように書きました。
帯状疱疹後の後遺症のひとつに神経痛があります。帯状疱疹後神経痛(PHN)といいます。5%~20%に合併するとされています。ほとんどの場合は片側のみにあって、痛み・かゆみ・しびれ・熱感などがあり、胸郭、肋骨に沿って出た場合は下着があたるだけでも痛かったりします。
原因としては皮膚や神経にダメージがあって炎症が起き、神経の異常な興奮で痛みが生じると考えられています、などと現代医学では説明しますが、私のような裏稼業的な治療家を長くやってますと、それだけではおさまらない例をいくつもみています。「何ヶ月も病因に通っているけど治らない」なんて方が、視点を変えると劇的に改善することはよくあります。
それはともかく、帯状疱疹後神経痛が、神経そのものの損傷によるものか二次的に生じているのかという疑問があって、二次的な原因なのかというのはいつも悩みます。
以下に、痛い部位の筋緊張がゆるむことによって症状が劇的に改善される例を取り上げたいと思います。いわゆる整体的な関節操作法で簡単に痛みが改善する例です。
https://kashima-hariq.com/2177
ここでは胸膈の胸肋関節と肋椎関節の関節の機能異常を取り上げました。今回は痛みと丘疹が出た肋間神経のむくみを改善すると帯状疱疹後神経痛が改善する例です。
帯状疱疹後の後遺症(帯状疱疹後神経痛) 血行不良が由来と思われる例
機序
機序は前回とほとんど同じなのですが、今回は症状がある部位の「むくみと熱感」に注目します。
帯状疱疹の急性期に丘疹ができて、それがかなり改善しても痛い場合、まず肋椎関節と胸肋関節の関節機能異常を診ます。それとともに症状のあるところを触診します。すると局所あるいは全身症状として熱感が残っていることがあります。体温が目立って高いわけではなく、症状のある部位の体表に熱感が残っている感じです。後遺症がある方はそういう方が多い。それとともに指を肋間に滑らせて触診するとが少し浮腫みが感じられることがあります。
そもそも炎症には五徴候というのがあって、発赤、熱感、腫脹、疼痛、機能障害の五つです。帯状疱疹の場合はウイルスに対する免疫反応のために起こります。血管透過性が増して拡張した血管(発赤・熱感の原因)から血液成分の滲出が起こると組織に浮腫が起ります(腫脹の原因)。浮腫が起こると組織圧の上昇で局所は圧迫され、放出された化学伝達物質が「痛み受容体」を刺激する(疼痛の原因)。急性期を過ぎると発赤はかなり減るのですが、それでも患部を直接触るとボワーとあつくて体表が浮腫んでいることがあり、これを改善させてやると熱感と痛みが減ることが多いんです。
施術法
鍼で局所を浅く刺したり、刺絡療法やったりします。お灸より鍼の法がいいです。今回はマッサージの軽擦法です。やり方は簡単で、肋間を指の一本で滑らせるように一方向に軽くマッサージするだけです(軽擦法)。ポイントは肋間筋に圧がかからないようにして滑らせることです。ときどき”くりくり”したしこりっぽい浮腫部もあり、こういうのを一つ一つ丁寧に除いてやることです。私はプロなので推拿の滾法(棍法)と軽擦法を組み合わせます。滾法というのは握りこぶしでやったり前腕で転がせるように行う手技です。手足の狭い骨間などは指でやることが多いです。
患部の浮腫が改善するように軽擦法・滾法をやると熱と浮腫がひいて痛みが改善することがあります。炎症反応で患部は酸化がすすみ老廃物が生み出されるわけですから、血液循環がよくなるとそれらが排除されていき、症状が改善されるんだと思われます。
慣れていない方がやると症状が悪化することもありますが、経験があるベテランがやると結構簡単に改善することもある例です。